この度、書籍『古窯』を出版いたしました。

近年では「六古窯」をはじめ、八十箇所余りの中世古窯の存在が知られるようになりました。各地の古窯で制作された器は、日本の風土そのものを表し、桃山陶器の礎としても決して見過ごすことはできません。当時の工人達による無心の造形と、窯変が生み出した自然釉の美しさは、現代の美意識にも通じています。

本書では、平安末期から室町時代に、九箇所の古窯で焼かれた魅力あふれる壺23点の写真図版を収めています。また、スミソニアン美術館日本美術部門の新進気鋭のアシスタントキュレーター、ソル・ジュン氏にご寄稿いただきました。世界の陶磁史の中でも別格の美的価値を持つ、日本の中世陶器の魅力を、皆様にお伝えできれば幸いです。